「命の日」記念日制定を考える

※読売新聞1月新聞掲載より抜粋

 私たちの故郷・北九州の活性化のため、多様な文化的視点から長く力を尽くして来られている、足立山麓文化村の村長 池浦正勝氏に今年の抱負を語ってもらった。


 皆様、昨今は、地球規模での環境の維持について多数の国の賛同が得られるなど、私たちの国が新しい歩みを始める第一歩のようにも思います。

 ここ数年、主に民間交流の立場で度々隣国の中国を訪れ、北京を始め各所の要人の方々とお話をさせていただく機会に恵まれています。オリンピックに向けて活気付きナショナリズムも高まる現地ですが、それにつけても圧倒されるのは膨大な民衆の数と、その中から湧き出るヒューマンパワーです。

 私たちの国日本も少子化を言われて久しいのですが、ふるさと北九州も政令指定都市でありながら人口が100万人の大台を割るという寂しい現状です。このような中、次世代を担ってくれる幼い命、近い将来を支えてくれる若者たちの命、そして勿論この社会を現在まで支え続けてくれた、シルバー世代の方々の命をライフ・オブ・クオリティの視点からも大切に思い、扱う必要があるのではないでしょうか。
申し上げるまでもなく、全ての命は分け隔てなく大切なのですが、中でも長く社会に尽くして来ていただいた高齢の方々を心から敬い、社会の宝として接することも、若者たちに間接的に命の尊さを分かっていただくことに繋がるのではと思います。

 つとに各界の良心から「命の日」の制定の必要性が言われてきましたが、その範疇の広さ、個々人の哲学の違いで未だ制定には至っていません。今後とも小異は捨てて大同の心で、各界の皆様へ命の尊さに声を揃えていただけるよう活動したいと思います。

 北九州市議会でも、この「命の日」の記念日制定が市議会議員さまより提言されました。市も制定に向かって答弁をし、「命の日」の制定に公に一歩が踏み出されています。


忘れられない悲惨な歴史

 ご存知のように、私たちの街北九州市は前の大戦で偶然にも原子爆弾による大殺戮を免れることが出来ました。しかし、その代わりに長崎ではこの世に生を受けたばかりの新生児から老若男女、非戦闘員を問わず7万人以上のかけがえのない命が、一瞬にして奪われることとなりました。

 大はこのような戦争による無残な殺戮から、小は個人による殺生、更にはいじめによる学校や社会からの排除まで、人として、しては為らない事は為らない事として、社会に生きる人が再度認識をあらたにする日が、必ず必要だと思います。



勝山公園・アンジェラスの鐘

 私は11歳の時、昭和20年8月8日八幡大空襲の日、焼夷弾で焼き殺された無数の市民を見、熱せられ溶けるアスファルトの道を歩けず呆然と佇んでいるところを、幸運にも旧知の方から救い出されました。このような体験を持つ私は、人々の尊い命が粗末にされることを看過して生きていてはならないのだと思います。

 長崎、そして広島をはじめ、前の大戦で亡くなられた多くの方々のご無念を繰り返してはいけません。また第2次交通戦争と言われた1988年でも約1万人の交通事故死亡者だったにも関わらず、近頃では年間の国内自殺者数が3万人を超えるという異常な状況も仄聞しています。このような命の価値の軽い中、原子爆弾による大量殺戮を辛くも免れたこの北九州市で、ぜひとも「命の日」が定められることに全力を尽くしたいと思います。


故郷を“人にやさしく元気になるまち”に

 また、命にはただ生きるだけでなく、生きる喜びが栄養として必要なのは申すまでもありません。

 現在盛んに論議されている少子化問題は、私達にとって実に身近で重要なテーマだと思います。ご存知のように年間出生率は1971年を最高に2.16人から、2003年には1.29人まで下降しています。現在の人口を維持できる出生率水準は2.07人といわれているそうですが、このままでは今の1億2千万人を超える人口が50年後には大正時代並みの8000万人台になるという、肌寒くなるような統計結果もあるそうです。

 人を愛すること、各地を旅し見聞を広める事、家族・友人と親しく触れ合うこと、人それぞれに生きて行く喜びは様々でしょう。でも、その中に故郷に抱かれる、その自然と歴史に触れる中で、子育てと教育を行う事も欠かせないひとつだと思っています。少子化への一つの歯止めとして、愛する故郷で子供たちを育みたいという気持ちを、私たちの多くが涵養して行くことも不可欠なのではないでしょうか。


「足立山麓文化村」の発足

 私は「北九州ファッション協会」を創設した後の次の活動として、1995年、自然との共生を「文化」のキーワードとして「NPO法人足立山麓文化村」を発足させました。

 北九州ファッション協会創立の過程で、私の地域に対する思いをファッション業界以外の多くの業種の方々にご理解いただいていたおかげか、一昨年2月には北九州市より「街づくり功労賞」をいただくなど、足立山麓文化村は順調に活動しています。

 足立山麓の文化を掘り起こし、北九州市民の皆様にその文化に親しんでいただく、足立山麓の地域文化の中で子供たちの健全な育成を目指すと言う活動を活発に続けています。

 また、この足立山の麓一体は、北九州市議会で、奈良朝からの歴史的遺産と豊かな自然で、市の観光資源として市内でも指折りの地域だとのご意見も拝聴しました。まさに当を得たご発言だと思います。


「文化の風」が市民一人ひとりに

 足立山麓には、奈良平安の時代からあった妙見宮や須賀神社のほかに、江戸時代に黄檗文化の華を咲かせた広寿山福聚寺など見るべき史跡や伝承が多数あります。山麓はまさに史跡の宝庫と言える状況です。先人たちの貴重な「人の文化」を学ぶこと、もっと自分達の「ふるさとを知る」ことが、この地の文化を生み出す原点という考え方に基づいて、いろいろな主催事業や後援など、「人」に「会」に「集まり」にあらゆる文化活動を足立山麓文化村は応援しています。

 具体的な活動として、その結晶とも言える「神楽」の創作があります。当村の創立10周年記念事業として、また次世代に伝える形として、足立山を舞台とする弓削道鏡の宇佐神宮の神託事件から、この地で和気清麻呂公の足が立った伝説まで、1200年前の悠久の物語を「創作神楽 あだち」として発表することができました。私たちは、こうした創作神楽の伝承化、子供たちの日本文化の理解促進など、地域に根ざした活動を地道に継続してきました。
 更に、北九州の元気を全国に発信するために、また北九州の新たな魅力を市民の方々にももっと知っていただくために市民参加型のWEB媒体であるこの「北九州ブログ」をアップロードさせました。おかげさまで1年間で50万以上のページビューと2000件に迫る貴重なコメントを多くの市民の皆様から頂戴しました。これにより北九州の魅力が更に発信されるとともに、皆様の建設的コメントで北九州市が更に良い街になることを願っています。

 引き続き人の輪を拡げ、足立山麓の文化の活性化と、憩の場として北九州市民のこの地への来訪を促進する考えです。「足立山麓文化村」への皆様のご理解とご支援、そしてご共感を頂戴できましたらこれほどの喜びはございません。
村 長  池 浦 正 勝


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