北九州ブログ

凛として風を切る風になる

      凛として風を切る風になる、居合道に魅せられて


二天会 小倉居合道クラブ
      師範代 山下 勝則さん


「いいですよ、なんでも聞いてください。」
畳の上に端座して私に向き合った山下さんは、
笑みを浮かべながらすでにある種の気迫を漂わせている。
こちらはまったく武道の心得がない。
お言葉に甘えて
「居合道ってなんですか?」

間抜けな質問にちょっと戸惑って
「うーん・・、武士道の精神を体現化したもの、日本人が
培ってきた精神文化だと思います。
居合道はスポーツ化できないのです。自己革新を目的に、
自分に勝つために、繰り返し形を練習するんです」
よく分からない。困惑していると

「剣道は剣を抜いて相手と対峙するでしょう。
居合道は剣を抜かない。抜かずして勝つが極意。気迫で勝つ。
そうなるために黙々と形を学ぶんですよ」


 居合道は400年の歴史がある古武道の一つで、日本刀を用いて鞘から剣を抜き、きちんと納めるところまでの一連の型(12通りある)の修練を通して自己革新を行うものらしい。メンタルな部分が非常に重要だという。

 取材にうかがった南小倉市民センターでは、毎週水曜日午後7時から9時まで、二天会の居合道練習が行われていた。二天会は居合道、剣道を稽古する会で、今から27年前に、高校教師の四ッ谷豊美さんがはじめられた。会員は小学1年生から72才まで、その数30名。

 取材中も次々に袴姿の男女が日本刀(模擬刀)を手に集まってくる。まるで時代劇にある道場の場面のようだが、言葉は少なくそれぞれが向かい合うこともなく、鏡に向かって、静かに日本刀を抜き、型を決め、また静かに納める。それが繰り返し行われる。場内には風を切る刀の音と、時折踏み込んだ足が床をたたく音だけが響く。


 居合道はスポーツではないが、試合はあるという。さきほどの「剣を抜かずして勝つ」とは、修練を積むと試合前の控えで集中している姿で勝敗がつくという。居合道は向かい合って対戦するのではなく、審査員を前に演武として共通の形を披露し、優劣を競う。武道ならではの段位もある。

 取材の日にも小学生がいたが、声もたてず、まわりの大人に気おされるでもなく、自分の学んでいる形をゆっくり決めていた。

 居合道には汗を流すスポーツとはまったく別の魅力があるようだ。まさに心のスポーツ。そもそも柔道をしていた山下さんも人にすすめられたのがきっかけで居合道の稽古に行き始めたらしいのだが、今ではこの出会いを大変感謝しているという。

 「長く柔道をしていましたから、体にいろんな癖がついていました。まず、外股でしょう。居合はまっすぐに足を運びます。この癖をとるのに2年かかりました。武士道は美しく潔くなければなりません。だから居合道は無駄のない作法です。これを始めて、いかに普通の生活で無駄な動きをしているかが分かりましたねえ」と山下さん。居合道は息子さんと一緒に始められ、今では親子とも有段者となり、山下さんはさらに奥義にふれようと定期的に大分県宇佐へ居合道の古流を習いに行っているという。
 クラブでは本当に幅広い年代の男女が日本刀を手に型の修練に没頭している。

 「全く武道を知らない若いママもいます。姿勢がよくなるし、呼吸法も学べますから、健康になります。僕も柔道でいためたらしい股関節の痛みがなくなりました。若い女性は礼儀の勉強もできるから、何よりの嫁入り道具になるのではないかと思います。」



 どうやら運動オンチでも、それなりに上達できるようだが、山下さんが初心者に最初に言い渡すのは、「時代劇のことは忘れるように。居合道の日本刀はあんなふうには使わない。チャリンなんて音は出さない。それは注意します。そういう意味では、余計な知識のない外国の人は形を習得するのが早いですね。」
 居合道というと、お祝いの席での演武が印象的だが、本来は居合にはそういう意味はないのだという。ただ、山下さんも請われて知り合いの結婚式で演武を披露したりすることはあって、やはり美しい所作だけに大変好評だったらしい。

 練習で皆さんが手にしているのは、真剣そっくりの模擬刀。練習を始めるには、模擬刀と居合道着があればいいという。
稽古の傍らで山下さんの真剣、日本刀を持たせていただいた。想像したより重いし、長い。剣先がふらふらとしてしまう。この刀を宙に舞わせて、一定の型をとるのは簡単ではなさそうだ。その日の山下さんの稽古はすべてこの真剣だった。
しかし、ミーハーなことを言えば、稽古で模擬とはいえ日本刀をピシリと構えて、すいと美しい姿勢をきめる様子は、なかなかカッコウがいい。「よくぞ日本に生まれけり」という気になる。

「日本刀は世界一の刃物だと思います。それを持つからにはそれに見合う精神性が必要です」と語る山下さんだが、その一方で、我慢を強制するような精神主義には批判的だ。
「寒い中で滝に打たれたりする、あういう寒行は私は感心しません。自分がしたくてするのはかまいませんが。武士道はもっと大らかなものですよ。日本刀ですら、軽く触れるように持つというのが本当なんですよ。居合も楽しんで欲しいですね。」


◇1月6日には小倉城天守閣広場で「二天会の初稽古」が行われる
 (午前10時〜)のでお時間があればご覧ください。


● 二天会 小倉居合道クラブ・・・・・ 練習は毎週水曜日と金曜日

      指導 三原政司五段 森本信正五段 

      会費 一名 月500円  ※見学大歓迎

   毎週水曜日 南小倉市民センター 午後7時〜9時

   第1金曜日 桜ヶ丘市民センター 午後7時〜9時
   第2金曜日 桜ヶ丘市民センター 午後7時〜9時 

   第3金曜日 富野市民センター 午後7時〜9時
   第4金曜日 富野市民センター 午後7時〜9時

   <連絡先>二天会 093-522-7528 山下勝則


2007/12/31(01:03) カテゴリ:study コメント(7) | トラックバック(0)

この記事に対するコメント

1.健康にいいでしょうねより  (2008/01/01 18:24)

刀ってものはスゴク重いです。何しろ鉄の棒ですから。片手でひゅんひゅん振り回すなんて、とても出来ません。居合いをすると、そうとう腹筋をはじめ全身の筋肉がしまるでしょうね。

2.怠け者侍より  (2008/01/05 10:19)

北九州は侍が多いですねー。前も宮本武蔵の飛天何とか流をしてる外国の方が出てましたよね。最近は格闘技も総合が主流になって柔術を初めカポエラやカンフーなんかN○Kで型の番組までやってたり、色んなのが入ってきましたよね。でもその中でも侍魂の武士道はチョット緊張感が別ですよね。だって刀で切られたら即、“死”ですから。

3.切れ者さぶらいより  (2008/01/06 10:21)

実は刀って熟練しなくちゃ斬れない代物なんですよ。少し反りがあるけど、中国の青流刀などと比べるとほとんど直刀でしょ。青流刀は反りが大きくて先端ほど幅が広い=重心が刀の先に有るので遠心力もつく、柄も刃と一体構造で頑丈。日本刀は目釘を差して柄に止めているだけ。要するに日本刀は使用にあたっては熟達しないと斬れないし、実用にあたっては脆弱な武器なんです。武器と言うより、昔から観賞用だったと思った方が正解だと思いますよ。あぁそれから、刃物で人を切るときは動脈を切らないと死にません。

4.日本文化より  (2008/01/08 21:44)

鎬を削る、切羽詰る、鍔競合い、大上段に構える、鈍ら・・・・、日本刀って日本の生活に溶け込んでますね。

5.中国文化より  (2008/01/11 09:40)

中国は刀剣そのものには精神性を求めませんね。合戦のとき、砥ぎ石を忘れた兵士は罰金だったんですって。

6.新撰組より  (2008/01/11 18:39)

中国文化さんへ。
そうですね。壬生義士伝で隊員さんが刀を研ぎながら、ずいぶん身幅が細ったって言ってましたね。

7.自分を律することより  (2008/01/13 21:54)

居合道には、日本刀でさまざまな所作を一部の無駄のない動きで次々に、無言で物語っていく、精神修養の世界があるようですね。
戦いは相手というより、自分との戦いなのでしょうか。
自分を高めるための道具がたまたま『刀』なのでしょう。そこには武器としての機能はないのがわかりました。
合気道クラブの会費って、ほんと500円なんですか。

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